とまった金を分けさせて、それで正式に縁を切るようにしてやろうと、磯五はその機会を待っていろいろに考えながら、このごろは、上きげんの日が続いているのだ。そこへ、だしぬけに日本一太郎がやって来ての話である。
「お高のほうがうまくいって、おめえもおいらも、こんな安心なことはねえのだ。どうだい。こんどひとつ手品ばかりの小屋をあけようと思うのだが、なあ大将、景気づけに見に来てくれねえか」
 磯五は、場所や日日《ひにち》のことを詳しく聞いて、連中を作って出かけようと約束したのだ。

      二

 七月十三日は王子権現《おうじごんげん》の祭礼で、俗にいうびんざさらの祭だ。お高のことで木場の甚と相識《しりあい》になった日本一太郎は、木場の甚の胆煎《きもい》りで、ここの境内の祭の前後五日間、自分が太夫になって手妻だけの小屋を張り通すことになって、大変な意気込みだ。
 手妻などというものは大道のものか、小屋に掛かってもほんのつけたりのもので、うどん粉のようなつなぎに過ぎなかったのが、はじめて一本立ちの興行をすることになったのだし、それに、さすらいの手品師日本一太郎老人にも、芸人としての矜持《ほこり》
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