ように、しんみりした女になっているのだ。そう思って、日本一太郎がじっとお駒をみつめていると、お駒はその心もちを読んでそれにこたえるように、つづけた。「あたしのようなはねあがり女《もの》でも、苦労をすると、これで、ちったあ落ちついてくるよ。ひどい男《やつ》に引っかかってねえ、お駒太夫も、われながら愛想《あいそ》がつきるほどだらしがなくなっちゃったのさ」
「おめえのことだ。さぞ意気な筋だろうぜ。年寄りを相手に、色ばなしも乙なものだ。そもなれそめはから一段語ったらいいじゃあねえか。こっちから、酒さかな持ち出しで、きこうてんだ」
「いやなこった。ひる間あんまりしゃべると、夜|眠《ね》られなくなるから、ま、ごめんこうむっておこうよ」
「こいつあよっぽど参っているのだな。昼寝られなくて、夜眠られなくて、それじゃあいつ睡《ねむ》るのだ。おめえは、ねむるのが恐ろしいのだろう?」
日本一太郎にこういわれて、お駒は、図星《ずぼし》をさされたようにちょっとどぎまぎしながら、
「なに、そんなこともないのだが、眠るときまって夢を見るのだよ」
「さ、その夢が恐ろしいのだろう」
「夢は、恐ろしいことはないのだよ。
前へ
次へ
全552ページ中469ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング