も会いたがっておりませんでございますもの」
「ふーむ。柘植家の金のことを知っておって、お前を捜し出そうともせず、今までどこで何をしていたものであろう」
「それはわたくしも、はっきりは存じませんでございます。一空様も木場の親方さんも、誰もご存じないのでございます。父も、何も申しませんのでございます」
「妙なはなしだな。みたところ、さほど金に恬淡《てんたん》たる仁《ひと》のようにも思われぬが――」若松屋惣七は、眉を寄せてつづけた。
「何ゆえお前を人手に渡したか、そこらのところを話したかな?」
「はい。旅から旅へ歩くのに、赤児《あかご》をつれていては、手足まといになるとか――」
「して、お前をもらい受けた男が、相良寛十郎と名乗って、実の父になりすまして死んでいったわけは?」
「そのことは、父は何も申しませんでございます」
「ちとどうもくさい。ようすがおかしい」若松屋惣七は、うめくような声だ。「あの日本一太郎とやら、実の父御ではないかもしれぬ。どうやらわしは食わせもののような気がしてならぬのだ」
「でも」お高の額部《ひたひ》は、おどろきのため白いのだ。「何しにそんな、そんな――それに、一空さま
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