保の奥様という人を加えて、片瀬の龍口寺へお詣りして、ついでに江の島を見物するはずだったけれど、待っていても、大久保の奥様の病気がよくならないし、そこへ紙魚亭主人が出府してきたので、急に三人で、雑司ヶ谷のおせい様の家《うち》にいるお高を訪れることになったのだ。
陽ざかりの庭に、松の影が人かげのように見えていた。芝が、南蛮の敷き物のように青く、そこここに置いてある石は、かわいて白かった。座敷の縁に、庭から来て腰かけて、歌子は、そばに立っている紙魚亭主人と話していた。歌子は、いつもの簡粗な着物を着て、陽やけのした顔を仰向かせて笑っていた。紙魚亭は、松葉をくわえてしきりにかみながら、歌子を見おろしていた。
歌子がいっていた。歌子は若松屋惣七のことをあに様と呼んでいた。
「あに様は、あのお高さんという人を想っているのでございます。でも、むりもございませんよねえ。お高さんはあんなにきれいな、気だてのいい人で、かわいそうな目にあいなすったのですものねえ。今でも、いっしょになっているようなものでしょうけれど、ほんとに家《うち》へ入れてあげたいと思いますよ」
歌子は、もっと何かいいそうにして、口を
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