ますか」
若松屋惣七は、近いうちに、武士時代の友人がひとりみえるかもしれぬというようなことをいった。若松屋惣七は、思い出したようにきいた。
「亭主はどうした。近ごろ会うたか」
六
押しつけた声だ。若松屋惣七は、感情といっしょに声を押しつけるのだ。お高は、かなしそうな眼をした。
「亭主などと、そんな意地のわるいことおっしゃらないでくださいまし。何もかもご存じでいらっしゃるくせに――」
「ふん。また泣き出しそうな声だな。よく泣くぞ」
「会いませんでございます。一度たずねてまいりましたけれど、佐吉さんにお頼みして、追い帰してもらいましてございます」
「ここへ来たのか。ずうずうしいやつじゃな」
「はい。ずうずうしいやつでございます」
「何しに来たのか」
「何しに来ましたのか存じませんけれど、いつぞや神田のほうへ御用たしにまいりましたとき、もと十番の馬場やしきにおりましたころ、お針を頼んでおりましたおしんさんという小母《おば》さんにぱったり道で会ったことがございます。むこうから呼びとめて、ちょっと立ち話をいたしましたが、わたくしは、何も申しませんでしたけれど、きっとそのおしん
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