じゅうお内儀さまの高音様にお仕立てものをさせていただいておりましたおしんでございますよ。旦那様は、おしんをお忘れでございますか。いろいろ御厄介になりましたおしんでございますよ。
 この磯屋のもち主が変わったということは伺いましたけれど、旦那様がおやりになっていらっしゃろうとは、存じませんでございましたよ。またこのたびはこちら様に働かしていただくようになりまして、やっぱり御縁があるのでございますねえ。不思議な気がいたしますよ。高音様はいかがでございますか」
 磯五が、どうこの場をつくろったものであろうかと考えていると、お駒ちゃんが顔いろをかえて進み出てきたが、そのまえに、おしんがいい続けていた。
「そういえば、いつぞや高音さまにお眼にかかりましたことがございますよ。神田のほうで、でも、へんでございますねえ。旦那がこの商売をおはじめになったことは、高音さまは、何にもおっしゃいませんでしたよ」
 お駒ちゃんが、はげしくふるえる声をはさんだ。
「この人には、おかみさんがあるの? こないだ神田であったんですって?」
「はい。お妹さんでいらしって、ご存じないのでございますか。高音さまとおっしゃるお
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