は蜻蛉《とんぼ》じゃが」と、和尚はさとすようにいった。「兎もとれまい。兎はおらんから。おれば、わしがとらえて、兎汁にするが」
龍造寺主計は、一空和尚のところへ来る学童のために金をおさめたのち、山門まで和尚に送られて、出るところであった。一空和尚は、龍造寺主計という人間が、すぐすきになったとみえて、ことわるのに、そこまでといって、ならんであるいて来たのだ。
龍造寺主計はあわてふためいているお高のようすを、ただごとではないと思った。やさしく抱き起こしてきいた。龍造寺主計は、女には、やさしいところがあるのだ。それは、いやみのあるやさしさではなくて、強いものが弱いものをいたわるというだけの、自然なやさしさだ。
「何ごとが起こったのか。わる者にでも追われましたか」
お高は、明るい世の中へ帰ったようで、うれしかった。着物のみだれを直しながら、しきりに、逃げてきたほうをふり返った。そこの樹のあいだから、今にも磯五が飛び出して来そうで、飛び出して来たら、こんどはこっちから、思いきりいいののしってやりましょうと思った。やっと呼吸《いき》をしずめて、口をきいた。
「あの、磯屋五兵衛さまが――」
と
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