ちへいらっしゃらずに、あんな娘《こ》を使いによこして呼び出したりなさるのでございますか」
そこは老松と老杉の幹にかこまれた、ちょっとした開きだ。下は、茶色になった去年の雑草だ。むこうに本堂が見えるのだ。
ここに、衣《きぬ》かけの松といって、名木になっている、いっぽんの木がある。下枝が一本、物ほし竿《ざお》のように横一文字に伸びて、地上三尺ばかりのところを、長く突き出ているのである。さながら衣をほすために細工したようであるというところから、いつからともなく衣かけの松の名があるのだが、いま磯五は、この衣かけの松の、横に張り出ている枝に肘《ひじ》をのせて、よりかかった。お高は、枯れ草のあいだにしゃがんだ。
「あのめくら野郎に会いたくねえから、おめえにここまで出て来てもらったのだ」
磯五は、お高にうす笑いを落とした。お高は、自分のほうから、一人とひとりで磯五にぶつかっていこうとさっき決心したことを思い出して、これはいい機会だと思った。
「わたしのほうにも、いいたいことがありますでございます。ざっくばらんにいいますよ。おせい様をだまかすのはよしてくださいまし。あなたがおせい様をだまして、い
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