られて、起《き》つねにおそし。臥《ふ》して南山《なんざん》を見て、旧詩をあらたむ」
 お高は、笑いだしていた。
「ほんとうに、結構でございます」
 龍造寺主計は、かたなの爪《つま》びきをつづけながら、また口をひらいた。こんども詩《うた》かと思うと、今度は、ことばであった。
「若松屋惣七どのはたずね人の助力など、なさらぬかな」
「それは、なさらないことは、ございませんが、どういう筋あいでございましょうか」
「ぜひわたしに手をかして、この江戸で、人をひとりさがし出してもらいたいのだ」
「さようでございますか。お身内の方でも、行方知れずになったのでございますか」
「いや。さようなわけではござらぬ。さがし出して、この刀に、血塗らねばならぬやつなのだ」
「はい。そうしますと、かたき討ちでございますか」
「仇敵《かたき》うち――といえば、かたきうちだが、かたき討ちでもない」
 このやりとりのあいだも、龍造寺主計は、つるぎのつま弾きをやめないのだ。伴奏入りの会話なのだ。
「すると、どういうことなのでございましょうか」
「人殺しをした者です」
「それでは、御公儀へ、御訴人《ごそにん》なすったほうが、お
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