あんまりでございます。あんまりむごうございます」
「むごい? このわしがむごいというのか」
「さようでございます。むごうございます。あんまりでございます。あんまりななされ方でございます。おうらみでございます」
「ふうむ、そのわけを聞こう」
「はい。磯五がなくなりまして、わたくしは、もう晴れてどうともできる身の上でございます。それなのに旦那様は、まるで他人のような口をおききあそばして――でございますけれど、わたくしは、何を申し上げているのでございましょう! じぶんながら、気でも違ったのではございましょうか。どうぞ、お聞き捨てくださいまし」
「そのことか。そのことなら、はっきり申す。断わる」
「おうちへお入れくださらないとおっしゃるのでございますか」
「そうじゃ。どうにもならん」
「わたくしが継ぎました母のお金のことでございますか」
「若松屋も、金持ちの若後家といっしょになったとは、いわれとうない」
「まあ、お金もちの若後家とおっしゃるのは、それはわたくしのことでございますか」
「さよう。まずそこらであろうな」
「お金持ちの若後家――おことばではございますが、あまりな面当てのようではございますまいか」
「面あてであっても、つら当てでなくても、それがほんとのところだ」
「――」
「金のある女など、きらいだ。いかにいわれても、どうにもならん。その、どうにもならんことに相方《そうほう》いろいろとことばをつくすのは、愚じゃ。よそう」
「でも、お金などございましても、ございませんでも――」
「同じだといいたいのだろうが、おれの気もちが違うな。お前に金がきてから、お前は遠いところへ行ってしもうた。わしの手の届かん遠いところへ行ってしもうた」
「わたくしはちっともそういうつもりはございません。そんなところがすこしでも見えようとは、じぶんでは思いませんでございます。やはり旦那様は、お気がお変わりなすったのでございます。そういうことをおっしゃって、それをいいことに、わたくしをおしりぞけなさろうというのでございます。高には、よくわかっておりますでございます」
「なに! 黙れっ!」

      四

 何、黙れと若松屋惣七がすこし大きな声を出したとき、縁の障子のかげにちらと人かげがしていたが、若松屋惣七もお高も気がつかないで話をつづけた。縁の障子のかげにたたずんでいる人物は、龍造寺主計で
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