なかった。そんなような、毎日だった。
 若松屋惣七は、遠く離れて、いっそうお高のことを真剣に思うようになった。龍造寺主計は、久しぶりに若松屋惣七を見て、そして、惣七といっしょに来るであろうと思っていただけに、またいっそうお高のことを思うようになった。ふたりは、ときどきぼんやり考えこんで黙りこんでいることがあった。
 どっちか、先に沈黙に気がついたほうが、きいた。
「おぬし、何を考えている」
「お主こそ、何を考えておった」
 二人とも、お高のことを考えていたとはいわずに、
「なに、ちょっと――」
 と、同じことばを同時にいいあって、それから、いっしょに笑った。そして、ふっとまた黙りこくって、両方ともお高のことを考えた。

      二

 そのお高のことで、一空和尚《いっくうおしょう》から飛脚が来たのだった。王子権現の祭で、日本一太郎と名乗るお高の父相良寛十郎の掛け小屋で火事があって、磯屋五兵衛が焼死して、お高が自由の身になったというのである。
 この手紙を見ると、仕事もだいたい片づいたところだったので、若松屋惣七は、すぐ江戸へ帰ることになったが、龍造寺主計も、しばらく江戸を見ていないので、あとを東兵衛の妻女にまかせて、若松屋惣七といっしょにちょっと江戸へ出ようといい出した。若松屋惣七も、道づれにはなることだし、長らく田舎にくすぶってきた龍造寺主計に江戸を見せたい気も多かったので、二人はすぐに旅支度をととのえて出発した。
 お高は、拝領町屋の雑賀屋のおせい様の家から、小石川金剛寺坂の若松屋惣七の留守宅へ帰ってきていた。晩春のような、だるい憂鬱《ゆううつ》な空が、むしむしする熱気をもって、金剛寺坂のあたりを押えつけていた。お高は、何かに呼ばれてここへ帰って来たものの、さて、その自分を呼んだものが何であるのか、さっぱりわからないといったような、夢の中で暮らしているような気もちをつづけていた。
 磯五が焼け死んだことも、うれしいようであり、かなしいようであった。それは、自分があの色悪《いろあく》と縁が切れて、じぶんをどう生かしてゆこうと自分の勝手になってきたのはうれしかったが、それでも、あの磯五ともう戦うことがなくなり、それに、今後じぶんは、単なる金の番人として暮らして行かなければならないと思うことは考えるだけで、かなりにお高を不愉快にし、かなしいことだった。
 自分に財
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