どうぞ。承《うけたま》わりとうございます」
「日本一太郎は、死んだのじゃ。近く死ぬようなことを申しておったに相違ない。死んだことにしておけ」
「は」
「死んだほうがよいのじゃ。高とやら申す、その娘のためにも」
「なぜでございましょう」
「父らしゅうない父であったことを今さとって、恥じているからじゃよ。しいて愛情を殺して、娘にもよそよそしくしておったことであろう。娘の妨げにならんように、身を隠したかったに相違ないな。
死んだものじゃ。すておけ、すておけ。身を殺し、また、娘の悪夫を殺して俗に申す腐れ縁、それから娘を解き放したのじゃよ。見上げた分別じゃ。ほめてやれ。が、ほめてやりとうても、仏であったな。あははは、拝んでやれ」
木場の甚はにっこりして、その笑顔を隠すためのようにうつむいた。が、忠相は、すばやくみつけて、
「笑いおるな、そろそろ参るぞ。よいか。ここにひとり、白髪《しらが》あたまの、他人《ひと》の頭痛を苦に病むことを稼業《しょうばい》にしておるおやじがおると思え」
「へ」
「日本一太郎と計らって、はじめから筋を編んだな」
「――」
「まず、日本一太郎の手品というに眼をつけたな」
「――」
「つぎに祭である。もってこいじゃ。そのおやじは香具師《やし》の縄張《なわば》りなどにも顔のきくところより、日本一太郎を後見し、自ら太夫元《たゆうもと》となって祭の境内に一小屋あけるな」
「――」
「日本一太郎とは、はじめから手はずがついているのじゃが、待てよ、その日本一太郎は、昔しりあいの女子《おなご》に会うて、それがまた娘の良人にたぶらかされたと聞いて、こりゃ怒りを大きゅうしたかも知れぬな。むりもない。
いよいよ、おやじめと取り決めた計略を行なわんと、いっそうこころをおどらして、それとなく、娘の夫なる者にも来観を依頼する」
「――」
「その者は、己《おの》れの手先、おのれの味方と信じておるから、謀《はか》られるとは知らず、大いによろこび、総見の気で、女子ふたり引きつれて初日に出かけたといたそう。筋書きどおりに、火を失したな。しかも、その者は筋書きどおりに焼死いたしたのじゃ、さすがは日本一の手妻じゃ。日本一、日本一、面白いぞ」
「恐れ入りましてございます」
「何も、そちが恐れ入ることはない」
「いえ、恐れ入りました」
「そうか。恐れ入ったか」
「恐れ入りました。が、二つほ
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