り》とかで、一空様という坊さまが、一度その用でみえられただけでございます」
「が、まあ柘植の金だけは、木場の親方のほうに積んであるのだから、いつ誰が出て来ても渡せることは、渡せるわけで、そのへんのことはいいのだが――」
「ほんとに固くしていられたので、柘植の者も大喜びでございましょう」
寄り合いの者たちはざわめいて、あちこちでこのお高のうわさをしているらしかった。そこへお高が、はいって来た。お高は、深川の木場の甚と、ほか二、三の人たちに取りまかれて、上気したような顔をみせていた。多勢の視線に困って、どこへすわっていいのかまごついているようすだった。
やがて、木場の甚と伊之吉があいだに立って、お高と与兵衛との話になったのだが、お高が柘植の当主として和泉屋の根を押えていることは既定の事実なので、与兵衛も何もいうことはないのだった。集まっている者たちに何もいうことのないのは、もちろんだった。
「さぞいろいろと苦労なすったことでございましょうが、これであなたも芽が吹き、おっかさんもあの世で安心しておいでなさることでございましょう」与兵衛は、こんなことをいうよりほかなかった。「このごろは日和《ひより》つづきで、雑司ヶ谷のほうにおいでとか聞きましたが、あちらはまた、江戸とは違って、もっとも、江戸からほんの一足ではございますが、それでも、万事に田舎々々してのんびりしていることでございましょう」
二
はい、と、いいえ、だけで受け答えして、さっきからうつむいていたお高が、急に顔を上げたのだ。
「こちらのお店とわたくしとは、これからどういうことになるのでございましょうか」
「どういうことと申しますと?」与兵衛が、木場の甚を見ながらお高にきき返して、「柘植のお家《うち》と和泉屋との関係《かかりあい》でございますか」
「はい。それから、早く申せば、わたくしの株、こちらのお店での役どころでございますけれど――」
「それはその――」
和泉屋与兵衛が、笑いにまぎらせてことばじりを濁そうとすると、木場の甚がそばから引き取って、代わりにこたえた。
「それはお高さん、おゆうさんのもっていたお金だけ取って身をひくか、それとも、そのまま和泉屋の商売《あきない》につぎ込んでおいて、お前さんも大本《おおもと》の商法に口を入れるか、それはお前さんのこころもち一つなのですよ」
柘植の分の
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