、馬鹿々々しそうにきいた。お高も、馬鹿々々しいような気がして、笑い出してしまった。
「まだ当分かかるようでございますよ」
「そうだろう。十年や二十年はかかるだろう」
若松屋惣七は、苦々しそうにいって、ぷいと横を向いた。若松屋惣七が不きげんになると、お高はやはり悲しい感じがした。
黄金《こがね》への道
一
「ふうむ、その財産とやらを、わしに保管させてはくれぬかな」
若松屋惣七が、ちらと眼をいたずらめかしてそういうと、お高は、袂を顔へ持って行って笑うのだ。
「そんなことをおっしゃっても、わたくしのもののようで、まだわたくしのものではございませんもの。母の代からの世話人で深川の木場の甚という人が預かっていてくれるのでございます」
それから二人は、まだ長いあいだ、磯五のことなど話し合って、肩をならべて寮の母屋《おもや》のほうへ引っ返して来た。若松屋惣七は、ふたりの将来について、何かいいたそうにして何もいわないのだ。お高のからだのぐあいをききかけて、それも若松屋惣七は黙りこんだ。二人とも、もう磯五とは関係がないと思っているので、そのことでは気が軽かった。
若松屋惣七がいった。
「どうも高はおれをおそれておるようだが、何もおそれることはないぞ。おれにしろ、お前にしろ、他人の迷惑にならぬ限り、おのが思うとおり暮らしてゆけばよいのだ」
お高は、自分でもわけのわからない涙が出てきていた。お高は、縁のあけ放してある座敷のほうへ近づいていたので、いそいでなみだをふいた。そのお高の眼に、袖垣《そでがき》を越して映ったものは、門からはいってくる磯五の姿であった。
おせい様とああいうことになり、自分ともこうなっている磯五が、どうしてのめのめ[#「のめのめ」に傍点]とこの雑司ヶ谷へ来ているのだろう? お高は、それが不思議なようで不思議でない気がした。それよりも、すぐおせい様のことが気づかわれた。磯五に対する若松屋惣七の憎悪も、この場合、心配であった。
「五兵衛さんが来ているようですけれど、どうぞ手荒なことはなさらないでくださいまし。おせい様を苦しめるようなものでございますから」
お高がささやくと、若松屋惣七の小鼻に皺が寄った。
「心配いたすな。どうしようともせぬ。が、おせい様は気の毒じゃな。悪いやつとはわかっても、まださっぱりあきらめきれずにおるのだろ
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