うに白くぐったりとなっているので、おせい様は、あわてた声を出した。
「これはいけませんよ。くたびれているところへ陽に当たって、気が遠くなったのでございましょうが、ほんとに大変ですねえ。早くうちへかついで行って、お医者さまに来ていただきましょうよ」
「なに、そんなにしなくても、ちょっと頭でも冷やせばすぐよくなるのです」
磯五は、尻端折《しりばしょ》りをして、ふところから手ぬぐいを出しながら、小川のほうへ草を分けようとした。その手ぬぐいに水を含ませて来ようというのだ。おせい様がいつになくすこし強い口調で呼びとめた。
「そんなことで直るものですか。この方はあなたのお従妹さんではありませんか。うちへおつれして介抱するのですよ」
そして、弱よわしいおせい様が、顔を真っ赤にして力んで、お高のからだを抱き起こそうとしているので、磯五も黙って見てはいられなかった。手を出さなければならなかった。
「いいのですよ、おせい様。わたしがかかえて行きますから。ほんとにおせい様は――」
磯五はそういいかけて、濡れた着物のようになっているお高を、小腋《こわき》にさらえこんでから、あとをつづけた。
「親切なおせい様だ」
両足を引きずってずり[#「ずり」に傍点]落ちてゆくお高を揺すり上げながら、磯五は、雑賀屋の寮のほうへ歩いて行った。おせい様が手を貸して、お高の腋の下を持ち上げていた。
これでお高は、この雑司ヶ谷のおせい様の寮に当分世話になることであろうと磯五は思ったが、それは彼にとって、この上もなく迷惑なことであった。磯五は、この二人の女がいっしょにいるところを見るのが、不愉快であった。じぶんの利益《ため》にならないことが、両方の口から両方の耳へ交換されるに相違ないと思った。これは何とかしなくてはならないと、忙しく思案しながら、数寄《すき》を凝らした雑賀屋の門内へ、お高を運び入れていた。
ひとつ、どうしても必要なことがあった。それは、お高がそこにいるあいだ、じぶんも予定を変更して寮に残っていなければならない――磯五は、そう思った。磯五は、その、死人のようになっているお高が、ほんとに死人であってくれればいいと思った。これは、磯五にも、はじめてきた考えであった。
彼は、その考えがあたまに上ると、びっくりとして蒼い顔になった。どこからか、生ぐさい血のにおいが漂ってくるような気がして、おせい
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