んにまかせてある、というのだ。
みな信じて、誰も疑うものはないと磯五は思っていた。ただあのお針頭のお市だけは、にこにこしながら、何もかも知っているような気がするのだが、それも、そんな気がするだけで、確かにお市が見やぶっているとは、磯五にもいえないのだ。
しかし、妹を選ぶにあたって、お駒ちゃんを採用したことは間違いであったことは、磯五も気がついていた。
おせい様は、何と思おうと、磯五の口ひとつでどうともなるのだから、そのほうはいいとして、こんなあばずれを妹だなどといって背負いこむようになったのは、第一、あの金剛寺坂の高音がいうことをきかないからだ。高音さえ、こっちの頼みどおりに、妹役を引きうけて店へ来てくれれば、何もすき好んで、この箸にも棒にもかからないお駒などを家《うち》へひき入れることはなかったのである。そう思うと磯五は、高音のお高が憎らしかった。
いかにいそいでいたとはいえ、どうしてあんなお駒などを妹に仕立てる気になったのであろう。お駒ちゃんは柄や色あいの考えなぞすこしもないのだ。まるっきり商売のあたまがないのだ。お駒ちゃんの持っているものは、悪口の舌だけで、それで家じゅうのものを追い使っている。見たところも、美しいはうつくしいが、何といっても下品で、とても山の手のいい客とは応対さえさせられないのである。
そんなことを考えると、磯五は自分を蹴とばしたくなった。が、磯五は、あくまで磯屋の黒幕になっていて、外部《そと》の人と接触したくなかったので、どうしても、お駒ちゃんのような妹役がひとり必要だったのである。それは、おせい様をだますためばかりではなく、店の奉公人に対しても、そのほうがにらみがきくと、磯五は考えていた。
染め物の色のことから、お駒ちゃんとあらそいになったのだった。磯五は、お駒ちゃんの膝からたたみのうえにひろがっている反物を、つま先で蹴りけり、いった。
「気をつけなくちゃあいけねえじゃねえか。妹とか何とかいわれて、図に乗るばかりが能じゃあねえんだ」
たちまち、お駒ちゃんの顔に、朱のいろがのぼった。
「何をいってるんだい。気をつけろだって。お前さんこそ、気をつけたがいいや。何だい、面白くもない。妹でもないものを妹だなんてつれまわして、あの四十島田をたらしこんでさ、いっしょになる気もないくせに、いっしょになるなるってお金をしぼっているのは、どこ
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