話をして、いずれその時節を待つつもりでおる。
とにかくわしは、こうしてあんたを奉公させておくに忍びんのじゃ。女子《おなご》というものは、働くために生まれたのではない――が、そう自分の思うことばかりいうても、しようがあるまい。どうです、あんたは、ちっとはわしがすきになれそうだかな」
お高は、適当のことばをさがすのに忙しかった。が、なかなかそれが発見されなかった。心が真ッ白になったような気もちだ。龍造寺主計のむきだしな口調には、何かしら力があるのだ、思い切って、声を押し出した。
「身にあまるおことばでございますけれど、どうぞ龍造寺さま、どうぞ、そのようなことはおっしゃらずにくださいまし」
「はて、すると、このわしを好きにはなれぬといわるるのかな」
「いいえ。けっしてそういうわけではございませぬ。失礼でございますが、わたくしは、龍造寺さまが好きでございます。大好きでございます。正直に申しますと、今まで、あなた様のような男らしい方にお眼にかかったことはないような気がいたしますのでございます。でも、夫婦になるなどと、そんな――」
「そんな気はないといわるるか」
「気があるないよりも、できませんのでございます」
龍造寺主計は、眼をみはった。
「何か、仔細《しさい》があるのかな」
「なにも仔細はございません」きっぱりいって、お高は、蒼い顔を上げた。「ただ、そのようなことは、考えてみたこともございませんもの」
「考えてみたことがなければいま考えてもらいたい。わたしは、返事があるまで、ここで待とう」
「まあ」お高は笑い出した。「そう右から左に、ごむりでございます」
「むりでもよい。一応よく思案なさい。わしは、だしぬけにいい出してあんたを驚かしたが、あんたは、わしという人間をまだよく知らんのだ。ゆっくりと勘考するがよい。はいという返辞でなくとも、先の望みさえ見せてくれれば、わしは、よろこび勇んで掛川の旅に出られる」
お高は、はげしく首を振った。
「いいえ、龍造寺さま。あなたの奥様にさせていただくなどと、高は、身分というものを心得ておりますでございます」
「これは異なことを。忘れてはいかん。わしは、もう武士ではないのだ。このとおり、町人である」
「それでも――それでは、はっきりお断わりさせていただきます。龍造寺さま、そればっかりはお許しくださいまし」
お高の心身を、にわかの悲し
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