そう骨身にこたえて、そのうえ氏育ちは、争われませんもので、本人はそのつもりでなくても、やれ、お上品ぶっているとか、いやにお高くとまっているとか、朋輩《ほうばい》衆と、ことごとにそりが合いません。
 いじめられ通しで、泣きのなみだで、それでもお主《ぬし》大事につとめておりますと、どうでしょう。あげくの果ては、あろうことか、あるまいことか、女中どもが寄ってたかって、お駒が、何か御主人のものを盗《と》ったとか、とんでもない濡《ぬ》れ衣《ぎぬ》をきせて、そのために、お仕着せまで取り上げられて、ほうり出されたのだそうです。
 これもみんな、ほかに身寄り葉よりもない、たった一人の妹を、うっちゃっておく気はなくても、まあ、うっちゃっておいた、わたしの罪でございます。さっきこの話を、お駒の口から聞いて、兄さん、わたしゃくやしい、といわれましたときは、すまない、お駒、許してくれ、このとおりだと、思わず、このやくざな兄貴のわたしが、お駒のまえに下りましたよ」

      四

「ほんとにねえ」おせい様は、しとやかに眼をぬぐった。
「いいえ、ですけれど、そんな馬鹿なことって、ありませんよ。これから、一っぱしり藁店へ出かけて行って、お民さんに談じこんでやりましょうよ」
 たちかけるのである。磯五は、あわてた。
「いけません。そんなことをなすっては、いけません。何といっても、お駒が、吉田屋さんへ奉公に上がっていたことのあるのは、事実ですし、それに、過ぎ去ったことではあり、いまとなっては、反証《あかし》の立てようのないことですから――」
「それもそうですねえ。それでは、あの人が、伊万里とかから帰ってきてから、会って、よくいいましょうよ」
「わたしが、三年ぶりに江戸へ舞い戻りましたときは、お駒は、もとの磯屋さんに奉公しながら、仕込みのこつ[#「こつ」に傍点]やなどを呑みこもうと、それとなく見ておりました。おかげをもちまして、わたしが磯屋五兵衛となりましたこんにち、あれの、そのときの下地が、たいそう役に立っているわけでございます」
「ほんとに、あなたといい、お駒さまといい、このおふたりの御兄妹ほど、そろいもそろって、世の中のあら浪《なみ》にもまれたお方は、ござんすまいねえ」
「何だか、わたしも、そんな気がいたしますよ。ふり返ってみますと、生まれてから、おせい様にお眼にかかるまでは、長いながい山み
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