―大東共報記者、青年独立党員。
鄭吉炳――安重根の同志。独立運動の遊説家。
クラシノフ――亡命中の露西亜革命党員。李剛の食客。他同志一、二。

李春華は一隅で、石油の古罐に炭火をおこして粥を煮て、葱《ねぎ》の皮をむいている。傍で卓連俊がその手伝いをしながら、生葱を食べている。クラシノフは、中央の机に腰かけて露語新聞を読み、鄭吉炳は箒でそこらを掃き、その間を李剛は、何か呟きながら探し物の態で、部屋じゅう跛足を引いて歩き廻っている。隅の卓子で、柳麗玉が手紙を書いているのを、朴鳳錫は印刷機を掃除しながら、ちらちらとその手許を覗く。
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柳麗玉 (手で、書いている紙片を覆って)お止しなさいよ、覗くの――人の書いてるものや読んでるものを覗くのは、失礼よ。
朴鳳錫 おや! まるで公爵家の家庭教師の言い草だ。ははあ、恋愛は昔から多くの惜しい同志を反動家にして来た。してみると、それは安さんへ書いているんですね。しかし、安さんなら、もうこのウラジオへ来てるはずですよ。
鄭吉炳 (箒をとめて)十七日にはそっちへ行くという、煙秋《エンチュウ》から
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