がお蔦を見かけて、あとをつけて、神田の連雀町でまかれたってこたあ俺にあちゃん[#「ちゃん」に傍点]とわかってる。安、なぜいままで黙ってた?」
「ごめんやす」
「ごめんやすじゃねえ」
「へえ」
「へえ[#「へえ」に傍点]じゃねえ。こうっ、安、われあ何だな俺を出し抜いて一人功名を立てようとしたな。どうだ。図星だろう?」
「と、とんでもない! そ、そんな――」
「なら、何だ? 何だよ? その理由《わけ》ってのをいってみな。え。おう聞こうじゃねえか」
「へえ。実は親分」と安は頭をかいて、「実あその、もうすこしはっきり[#「はっきり」に傍点]見当がついてから申し上げようと思っていましたんで……ついその、胸一つに畳んでおく、ってなことに。へへへへ、ごめんやす」
 文次の眼がぎょろ[#「ぎょろ」に傍点]っと光った。
「嘘をつけ! てめえは何だろう、あのお蔦に惚れてやがって、それで、俺にこっそり女をつらめいて味なまねをしようとたくらんでいたんだろう? いうことを聞けあ眼をつぶって放してやるとか何とかぬかすつもりで」
「じょ、冗談じゃねえ!」
「そうよ冗談じゃねえぜ。それに安、お蔦あ桝目《ますめ》を打っ
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