を踏んでいるとみえて、なかなか堂に入っている。
「さ、性根をすえて返答してもらいたい。そもそも何の恨みがあって、女の死骸を鎧櫃へ詰めて届けたのだ? いやさ。それを聞こう。それを聞こう」
「しかし、饗庭様では鎧櫃を受け取らぬときっぱりおおせられましたが――」
「それは、拙者が出て応対したことゆえ、本人の拙者がこうしてここへ正式に談じに参るまでは表向き受け取らぬということにしておいたのだ」
 受け取ったのは影屋敷なのに、なんとうまい嘘をついている――文次は感心した。それに女の死骸とは!
 蛇ににらまれた蛙同様、閑山はぐう[#「ぐう」に傍点]の音も立てずにすくんでいるらしい。それとも相手が猫だから、まず鼠《ねずみ》というところかもしれない。悪党らしくもないようだが、何とかして金を出さずにこの場をすませたいというのだから、閑山の苦しがるのもむりもないわけで、かげで一伍一什《いちぶしじゅう》をきいている文次には、当初《はじめ》からのいきさつが掌《てのひら》を指すようにわかってしまった。
 鎧櫃の底で、あの眼じるしのある小判をみつけたとき、すでに文次は櫃の中には女が隠れていたことをみぬいたのだ。

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