殺人迷路
(連作探偵小説第八回)
浜尾四郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)二木《ふたき》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)あいつ[#「あいつ」に傍点]
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十日の勝負
「いいえ、僕の云ってる事は決して嘘や空想じゃありません。たしかにあいつです。今お話したバーで見た怪しいあの男です」
星田代二は生れてはじめて検事局の調室に引張り出されて、差向いでいる二木《ふたき》検事に対して必死の弁明をやりはじめた。
二木検事は、警視庁から送局された書類を机の前におきながら、殆ど無表情で星田に相対して居る。
「ふん、君は本庁で取調べられた時も、あくまでも否認しつづけて居るね。そうして、あいつ[#「あいつ」に傍点]だとか怪しい男だとか云っているが、僕をして云わしむるならあいつ[#「あいつ」に傍点]即ち怪しい男と君が云うのは即ち君自身のことなのだよ。
ところで検事局という所は、毎日否認ばかりする被疑者に必ず一人や二人はぶつかる場所で、而《しか》して――うん、ここをよくきき給え――いくら否認しつづけても、僕が君を殺人犯人也と確信
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