目のお嬢様が、西郷薬局の番号を教えて下さつて、お嬢様の風邪薬をすぐ作つてくれるように電話をかけろということでございましたので、その通りに致しました。十五分ほどたちましてから、西郷薬局にまいりました。はじめての所なので、お邸で道などよくうかがつてまいりました。向うにつくと、もうできておりましたのですぐ薬を受け取り、手にもつて戻りました。ちようどお台所にさだ子様がいらしつたのですぐお渡し申し上げましたのでございます」
「君は、薬局からどこにもよらずまつすぐに戻つたかね」
「はい、どこにもよりませんでした」
「誰かに会いはしなかつたか」
 ちよつとやす子はためらつたようだつた。それは質問の意味を考えているようにも見えた。
「いえ、誰にもあいませんでした」
「薬はたしかに手にもつて来たね」
「はい、手にもつておりました」
 佐田やす子に対する聴取はこれで終つた。
 次いで笹田執事がよばれて、種々きかれたけれども、この老人は薬の件については何も知らぬようで、あまり要領を得ず、このききとりもまもなく終つた。
「じや今日はこれ位で引き上げようじやないか」
 検事は、秋川家で骨を折つて作つてくれた飲物
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