身を投げて自殺したという事になつているのだが、実は当局の手の充分にのびた以外に、藤枝と林田の手が両方から犯人の首にのびたのであつた。
 藤枝の手におちるか、林田の手に捕われるかという所で犯人は進退きわまつて自殺したのである。

      15[#「15」は縦中横]

 私は林田英三の経歴を詳しく知らない。けれども、藤枝のような官僚的な過去は全くもたないらしく、某私立大学を卒業後、犯罪学にひどく興味をもち、そのまま学究として進んだなら、あるいは学位を得るのも難くはなかつたろうと云われている。ただ彼の活動的気象は終日彼を書斎にとじこめることを許さず実際の犯罪事件に手を染めさせるに至つた。
 私立探偵としての彼の手腕は右にも述べた通り、並み並みのものではなく、たちまちにして彼の名は警察方面と悪人達の間に評判となつた。
 私はまだ一回も彼に会つたことはない。いよいよこの事件で彼にあい得るのだ。
 今や殺人犯人は藤枝と警察当局との以外に林田という大敵を向うにまわさねばならなくなつたのである。実に壮観というべきではないか。
 殺人鬼を繞つて当局と藤枝と林田の描く三つ巴は如何に発展するか。好奇心を
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