ていました。私はわけが判りませんがともかく母の身の上に何事かおこつたと思いましたから、一緒になつて戸をこわしにかかりましたが、父がやつと一方を打ち破つたので、いそいで寝室にはいつて見ると母がゆかの上に倒れています。父があわてて抱き起しましたが、母ははつきり口がきけません」
「ちよつと待つて下さい。お母様の部屋にはあかりがついていたのですか」藤枝がまた訊ねた。
「はい。電気がついていました」
「お母様はいつも電気をつけて休まれるでしようか」
「いいえ、まつくらにして眠ります」
すると検事がひきとつて
「あの部屋には、天井に電燈が一つ、それからベッドのそばの机の上にスタンドがおいてある筈ですね。今あなたが云つたのはどつちの灯ですか」
ひろ子はちよつと考えていたが、
「天井の方の電気はたしかについていたと思いますが、スタンドの方はどうだつたかはつきりおぼえません」
「それからもう一つ。天井の電気のスイッチは、たしかドアをあけたすぐ左手の壁についていましたね」
「はい」
「すなわち、お母様のベッドの中からは手が届かない、ということになりますね。もしお母様がつけた灯とすれば――無論そう考える
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