とは、永遠の謎である。
 里村千代から秋川駿三にあてて送られてあつた筈の多くの脅迫状も、林田の家からは発見されなかつた。無論、完全にいつのまにか焼きすてられてでもしまつたものだろう。
 里村千代の娘は一応取り調べられたけれども大したことはなくすぐ釈放された。彼女はただヒステリーの母に迫られて、心ならずもタイプライターを打つたにすぎなかつたからである。
 一番大切なのは、事件後に於ける、藤枝の秋川一家を朗かにする努力だつた。
 すでに度々記した通り秋川一家には、ひろ子とさだ子の二人しか生存しておらず、このたつた二人の姉妹がかたきの如くにらみ合つているので、まずこの気分をなごやかにさせることが、藤枝にとつては犯人捕縛以上の骨折だつた。
 彼はまず、事件の経過を姉妹の前に全部展開し、次に事件中の二人の心理をはつきりと指摘した。それから、ひろ子に対しては、その論理的な頭脳とクリミノロギーに関する知識を充分賞讃するのを忘れなかつたけれども同時に、そのさだ子に対する嫌疑の根拠なきを力説した。次いでさだ子に対しては、彼女が恋人と共に悩みぬいた労苦に満腔の同情を表わした後、如何に彼女が巧妙に林田の欺瞞
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