う。
「では君、何故もと早くそれをやらなかつたんだい。君は第二の事件のあとですでに林田を疑つている。少くも第三の事件の後には君は相当の確信を得ているではないか。あの時君の推理を書いて彼につきつけてやつたら、林田はあの時自殺していただろうにね」
「そうは云えない、そう簡単には行かんよ。第一あの頃には、動機が判らなかつたために僕の方に自信がなかつた。第二、これは重大なことだが林田の心理状態を考えに入れなければならぬ。彼の心理状態はあの頃と今ではまるで違つているぜ。あの頃は終生の仇たる駿三がピンピンしていた。――もつとも弱つてはいたがともかく生きていた。だからもしあの時に僕が彼の犯罪をあばいてつきつければ、たとえ誇りを失つても、彼はヤケになつてあばれる勇気が残つている。しかるに今はどうだ。最後の目的たる駿三は一足おさきに死んでしまつた。彼は少からず力抜けているのみか、一体駿三は誰に殺されたのか、という疑惑の中にさえいる。僕はそこを狙つたんだよ。それですらあいつ、死に際に悪あがきをしやがつた。僕は実は昨夜の中に彼はおとなしく……そうだ、英雄らしく従容として死をえらぶと信じていたのだ。だから今朝
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