るのにも都合がいいからな」
「では第二、誰でも一応疑えというのは、君は林田をも疑つていたということだね」(同上参照)
「そうさ。しかして第三の伊達が警察にとめられている限り殺人事件はおこらぬ、というのは、伊達が犯人だという意味ではない。林田が犯人だからさ。林田はすべての殺人の嫌疑を伊達にかぶらせようとしているのだ。従つて彼が警察にとめられている間は、林田は手を下さない。伊達の行動があいまいな時をえらんで必ずあいつ、ことをするのだよ」
「僕にはどうしても判らぬことがある。君がそれだけ林田を疑つていたならば、何故、早く警察に訴え出なかつたのだ。そうすれば初江は少くも助かつたかも知れないじやないか」
「ああ、君の批難は一応もつともだけれども、二つの理由からして僕は弁解するね。第一は、今となつてこそ僕ははつきりいつているがあの当時は今思う程の自信がなかつたのだ。というのは、何故彼があんなまねをするかということが判らなかつたしすべてが一つの推理の上に立つていたからね、他のもう一つの重大な理由は僕が法律家だからさ。いいかえれば僕は法律というものがどの位力のないものかをよく知つているからだ。かりにあ
前へ
次へ
全566ページ中536ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
浜尾 四郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング