うのがあつた、それと同じ手だとやつと悟つたのだ。君は四月二十一日に僕が秋川邸でさだ子に『それ以外に何か御心配なことがあなた御自身でも何もないのでしよう。たとえば、その後伊達君が邸内でうろうろしているのを誰かに見られたなんていうことはないんでしよう』とやつたら『そ、それは勿論でございます』とあわてて云つたけれど、明らかにあれはうそだという表情だつたが、あれをおぼえているだろうね。(あらしの前第五回参照)これで僕は一層確信を強めたんだ。

      3

「林田としてはあのレコードのことを僕にきいて来たのも大失策さ。あいつ俺の音楽青年だつたことを知らないのだ」
「やはりあれも盲点の一つかね」
「うん、ともかく失敗だつたよ。さあこう考えて来ると林田が正しく犯人だ。皮肉にも彼は僕らと共に犯人を探しまわつている。ただ判らないのは、一体何のために彼が秋川一家を恨んでいるのか、ということだ。伊達の素性の方は、さきに手がまわしてあつたから大ていあの時分に判つた。駿三が君に語つた以上に僕にはあの頃になつては判つていた、ことに今から二十年前の出来事だつたから、姦通事件もほぼ今泉町の人々の口から知ることが
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