声名をよく知つていたからだ。そこで駿三は林田だけには過去の罪を悉く述べたのだ。駿三の白状を聞いた林田は運命の相似形をしばらく驚嘆して見つめていたにちがいない。しかも頼つて来た相手は、四十年前の宿命の三角形の一角にいるべき山田家の息子だ。この三角形の相似がどれほど彼をおびやかしたかは蓋し想像するに難くない。幼少の頃、深くほりこまれた呪いが、成人した林田の頭の中で再び息をしはじめる。彼は何者だ。私立探偵である。犯罪人を追うことによつて、犯罪を研究することによつて、彼は完全なクリミノローグになつている。しかも、自分の過去をめぐる宿命の三角形の中に、相似形が又ここに一つあらわれている。もし犯罪が行われればフレッシュな内側の三角形が無論問題になるべきで、それがため林田が関係している四十年前の三角形は巧みにかげにかくれていることが出来る。
「永年の間、眠つていた呪いが頭をもたげはじめた。加うるに犯罪学者としての彼の自信が彼をけしかけた。いざという場合にはことごとく嫌疑は脅迫状の送り主にかかる。更に加うるに秋川家のあのふしぎな家庭内の空気がある。時正に乗ずべしというわけさ」
「それにしても藤枝君、君
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