な気もちはなかつたのだろう。しかし幼時に吹きこまれた呪いは、根強く彼の頭の中で生長して行つた。
「ところが、山田信之助は林田文次が死んでから八年程たつて病死している。当時英三は十六、七だから、彼の手がのびたわけではない。ここにおいて、恨みはその子の健《たけし》と駿三にうつつたわけだ。ところが健は、結婚して間もなく僅か二十七で一人の息子を残して死んでしまつている。これは正しく病死だ。健は駿三より三つ上だつたから健が死んだ時に駿三は二十四才、しかして英三はそれより四つ下だから二十才である。健の残した小太郎という子はどうしたかというと、十二才の時に、近所に蝉を取りに行くと云つて出たまま行方不明となり、間もなく古池の中からその死体が出たが、他殺の嫌疑なく、誤つて足を踏みはずして死んだものと認定された。何分中国の一寒村での出来事だから誰にも大した注意をひかれずにすんでしまつた。しかし今から思うと、当時私立大学を出た頃だつたからあるいは彼の手がのびたのかも判らぬ。が、これは永久に解けぬ謎さ。そこでいよいよ英三の仇は秋川家に入つた駿三及びその家族ということになつたわけだ」
「そんなら、何故もつと早く
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