かかわらず、林田文次の妻満子と関係してしまつたのだ。いいか。ここでも姦通劇が行われたのだぜ。そうして、二十年後の伊達捷平と同じく、この林田文次という男は当時病気で床についていたために、彼は妻の不貞を知りながらも、悲憤の涙を呑んでそれを見ていなければならなかつたのだ。しかしその結果は伊達の場合とは多少趣きをことにしている。満子が先に死んだ。自殺だと伝えられているが、あるいは夫文次にひそかに殺されたのかも知れない。何分四十年以前のでき事なので、この辺の調査は充分にできない。この点は伊達捷平の場合よりずつと調べが困難である。自殺とすれば彼女は、伊達かよ子と同じく自分の罪を悔いたのであろう。そこで残された文次はどうしたか。彼は今云つた通り当時から病身だつた。そうして妻が死んでから七年生きていたけれどもその間妻と山田信之助とを呪いつづけた。満子が死んだ時、二人の間には一才になる子があつた。これがすなわち林田英三である。

      2

「秋川一家にかかる殺人事件を惹起した呪いは決して二十年前の伊達捷平の呪いではない。
「彼の呪いは里村千代を通じて脅迫状となつて表われた。しかし、この多くの生命
前へ 次へ
全566ページ中516ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
浜尾 四郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング