どこかに行きましたよ」
「さあそこだ。林田は一体どこへ行つたか」
 藤枝はそういつて一座を見渡した。
「電話だ。電話のある所だ。なるべく人に聞かれないような工合にできている電話さ」
 答えたのは検事だつた。
「そうだ。君の云う通りだ」
「藤枝君、今君に云われてやつと考えついたんだよ。林田はどこからか、里村千代に電話をかけて何か云わせたんだ。それでほら、初江に怪しい電話がかかつて来たわけだね」(風呂場の花嫁第一回参照)
「そうさ。その通り。五時二十分頃に、初江をよび出して彼女に次のように警告せよと云つたんだ。『木沢氏の薬をのんではいけない、危険だから。必ずのんではいけない』と。これは林田があとで検事や警部に話した通りだ。(警部の論理第三回参照)ここまでは林田はほんとうのことを云つてる。しかし彼が千代につけた智慧はこれだけではなかつたんだ。まだあとがある。『ひろ子さんの机の上に一包薬がおいてあるがあれをおのみなさい』と、これは一つの仮説だがたとえばこんな事を云つたのだろうよ。

      13[#「13」は縦中横]

「そこで僕は、かねて林田の所持して懐中していた薬にはいろいろ種類があつ
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