して、階段の中途まで上つて駿太郎の名を呼んだ時だ、(第二の惨劇第七回参照)もしあの時二人がほんとに二階に上つてさだ子の部屋まで行つたらそこに林田のいないことが判つたはずだからな。が、あの際二人が二階まで上らなかつたことは極く自然なことで手おちとは云えまい。さて林田は、惨劇がおこつた後、如何にしてさだ子に沈黙を守らせるべきか、ということを考えた。しかして彼は実にこれを巧みに遂行してしまつたんだ。君はおぼえているだろう。第二の惨劇の直後われわれは日本座敷に集つている秋川家の家族に会つた。
「その時僕はあの当時の家族の行動をきいた。『さだ子さんは、この騒ぎの時上の部屋にたしかにずつといたんだね』と僕がかなり無遠慮に質問をした。すると、その刹那さだ子が赤くなつて下を向いたことを君はおぼえているかい。しかしてその時、林田が『ああ、さだ子さんは、僕と話をしていた。さだ子さんの部屋でいろいろ質問をしていたんだよ[#「いろいろ質問をしていたんだよ」に傍点]』とあつさり答えたものだ。(惨死体第五回参照)ねえ、この一ことは非常に重大な役割を演じたのだぜ。林田はこの一言でさだ子のアリバイを証明してやつたと同
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