云いはしまいという自信。もう一つは、ああ云つてもまさか僕が、じや、えんりよしてくれ、と云うはずがないと考えたんだ。これは今までの例によつて彼には充分判つていた筈だ」
「それはいいとして一体林田はそこでどうしようとしたんだね」
 今度は検事が口を出す。
「そうさ。まず僕の考えは、やす[#「やす」に傍点]を庭に出しておいて一刻も早く片付けてしまおうというわけだつたのだろう。おそらく、駿太郎殺害は偶然のチャンスをつかんだのにすぎない。すなわち、僕らがあの室から出て来るといきなりひろ子と駿太郎にぶつかつた。ひろ子は僕がつれて応接間に行く。駿太郎はピヤノの部屋でレコードをかけている。さだ子は二階の自分の部屋にいる。とこう判つているのだ。いいかい、これからがまた大切な点だよ。林田は草笛をきいているから――彼は何も気が付かぬふりをしていたが無論知つていた筈なんだ。――やす[#「やす」に傍点]が庭の森の中に行つたことをすぐさとつた。一刻も早く彼女を片付けなければらならない、自分があとから森の中に行かねばならぬ。それには自分のアリバイを立てておくことが絶対に必要となつたのだ。そこで、彼は実に適当な人間を
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