らかつたわけだよ。これが一つの考え方。もう一つの考え方は、さだ子は全然関係がなかつたという見方で、ひろ子が出かけたと知るやいきなり、彼が泉タクシーへ電話をかけ、次いで敷島ガレーヂへあたりをつけてきかせ、僕のオフィスの近所で車がとまつたときくとすぐに僕のことを思い出して、ハハァ、とひろ子の行先をたしかめたというのだ。ともかく妹が姉の部屋にはいつてそつと吸取紙を見るということはかなりはしたない[#「はしたない」に傍点]ことだから、さつきさだ子に詰問することは出来なかつたが、以上いずれにせよ、林田は間に里村千代を使つて、ひろ子の行先をたしかめたのさ。そこでいよいよお出かけという段取りなのだが、その前にもう一つあくどいまねをしている。カカルトコロニイルベカラズ云々というあの拙い文章の脅迫状ね。あれを御自身でタイプライターで打つて往来から僕のオフィスに使をよこしたんだよ。彼がことさら下手な文章を書いたのは里村千代らしく見せたのさ」
「ではあの脅迫状は千代が書いたのではなかつたのか」と私が思わず云つた。
「無論だよ。あればかりじやない。僕らが現認した脅迫状は全部林田がよこしたものだよ。千代が娘に打
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