男のことを云つているとしか思われない。やつぱり真犯人は彼だつたのか。それにしても、藤枝の説によれば、伊達の実の父は秋川駿三となり、林田に従えばやはり捷平になるのだ。なるほど、事件の暗さには関係するが、犯罪そのものにはまるで関係のないことではないか。
私には、名探偵ともあろう二人が、こんな些細なことをムキになつて論じ合つている理由が少しもわからなかつた。
「君は今そう云つているがあとでよく考えて見給え。ゆつくりと一人で考えて見給え。僕の云つたことが正しいということが判るよ」
「何を馬鹿なことを云つているんだい、君は、君こそそのまちがいをさとるよ」
二人はまだ同じことを云い合つている。
気まずい沈黙がしばらくつづいた。
「では、これ以上、君に云うことはない。君が僕の説をどうしても容れない以上、僕は僕の勝手な行動をとるよ」
藤枝は立ち上つたがやがてポケットから一つの封書をとり出した。
「ここの中に僕の云つたことを立証すべき書類がすつかりはいつている。ゆつくりとよんでくれ給え。ではこれで失敬する」
林田はだまつてこれを受け取つた。
二人は不機嫌のままで袂を別つた。
一体、二人はい
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