伊達は、語り終つて、目を伏せた。

      2

「君は手紙を取り出すとすぐまた鏡をもとのようにして戻つたのだね」
 藤枝がきく。
「そうです。そうしておかなければ僕がはいつたことがすぐ知れると思つたのです」
「秋川駿三がそういう過去をもつた人間である、ということを、お前はほんとに昨日になつてはじめて知つたのかね」と警部。
「無論です。それまではほんとに何も知らなかつたんです」
「そうかね。たしかに」
 警部はやや疑わしそうな顔をしながら藤枝の方を見た。
「お前は気がついているかどうか知らぬが、駿三がお前の父の仇だということが判つたと云うことは、お前の為には決して利益にはならんのだぜ」
「どうしてですか」
 伊達はほんとうに気がつかぬというようすでせき込んでたずねた。
「判り切つているじやないか。秋川一家はお前の仇だ。この仇の家の者がだんだんと殺されて行くとすれば、一体誰がまず第一に疑われるのだ。ねえ。もう一つ、この事件はお前が警察に捕まつている間は決して起つていないのだ」
 最後の警部のひとことで、私はかつて藤枝が私に「伊達が警察にいる限り、事件はおこらない」と云つたことを思い出
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