部は苦り切つた面持で現れたが、さすがにいきなり藤枝を叱りとばすわけにもいかぬらしく、だまつて椅子に腰かけた。
「昨夜はどうも失礼しました。今日の新聞記事でお怒りのことと思いますが……」
 藤枝の方が先手を打つた。
「きのうあなたが帰りがけに私に相談されたので云つていいことだけは申したつもりだ。私もまさかあれ全部をあなたがしやべつたとは云いませんがね。しかしあなたからより外洩れぬようなことが出ているのでね」
「高橋さん。今日一日待つて下さい。いや一日でなくてもいい、もう数時間たてば私がなぜあんなおしやべりをしたか、ということがはつきり判りますよ」
 藤枝のこの謎のような言葉は、しかし高橋警部の機嫌をよくする役には立たなかつた。
「何のことか私には判らんが」
「いや、必ず判るのです。きつとですよ」
 けれども、われわれは一日も、いや数時間も待つ必要はなかつた。
 藤枝のこの言葉に対して警部が何か云おうとした途端、ドアがあいて一人の制服を着た[#「着た」は底本では「来た」]巡査があわただしくはいつて来た。
「警部殿、今へんな女が一人とび込んで来ました。警部殿に是非お目にかかりたいというんです
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