「だから約束通りじやないか。つまり君の云つたように犯人は紳士協約を守つたことになる」
「そうさ。だから俺にはいよいよ判らなくなつたんだ」
藤枝の云うことの方が余程わからない。
この時、笹田執事の案内で林田があたふたとしてはいつて来た。
意外の事実
1
「藤枝君」
「林田君」
両雄はこう云つたきり、しばらくは一言も発しなかつた。
「林田君、実に意外なことが起つた。全くおどろいた。君も驚いたろう」
「うん、全く意外だ。主人がやられるとは! ほんとうに驚いたよ」
林田の顔色にも、包みかくせぬ驚愕の色が浮んでいた。
「一体どうしたつてんだい」
林田の問に対して藤枝は今までのいきさつを少しも包みかくさずに物語つた。
「ふうん、すると、主人がベッドを出てから、僅か六、七分のうちの出来事なんだな」
「そうさ。そうして犯人は確かに庭から来たものらしい。ほれ、この窓の下に足跡がある」
「犯人は、窓から忍び入つて、一撃を主人の後頭部に加えたということになるのかな。ねえ、木沢さん」
「さよう。しかし解剖して見ないことにははつきり判らんですが」
「ただ死体の著しい特徴であるこ
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