ある。
 彼は二十六日までさんざん警察によばれて取り調べられていたのだが、高橋警部が急にひろ子に目をつけるようになつてから当分呼ばれぬようになつて、ほつと安心して気がゆるんだせいか、風邪気味で二十七日から床についてしまつた。
 私が、彼の病気を知つたのは二十七日であつた。この日、一人でひろ子のいない淋しい秋川邸に私が行くと、木沢氏に会つた。木沢氏から伊達のことをきいたのである。
 伊達が病気ときいてさだ子が大変心配して木沢氏に頼んだので、木沢氏が診てやつたらしく、大した事はないけれども、熱がある、という事だつた。
 私はひろ子が警察によばれている間、さだ子が一体どんな様子でいるか知りたかつたので、会おうと思つたのだが、彼女は毎日の新聞紙及び周囲の評判で秋川家が今社会の問題の中心となつていることを知りすつかり気をくさらしていて、伊達を見舞いに行くことすらさけているというわけで、彼女に会う事は遠慮してその足ですぐに伊達を見舞いに行つて見た。
 伊達は思つたより元気でいろいろ物語つたけれども見た所ひどくやつれている。
 私は彼が警察によばれて以来、まだゆつくりと話したことはなかつたのだが、今
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