何故か私は今云つた藤枝の言葉をおもい出した。
「よく考えて見給え。よく!」
はて、どういう意味かしら。
後から考えて見れば――いや、あとからでなくても、賢明なる読者には私が今まで展開した事実から推して、藤枝が何故ひろ子の為に弁解してやらなかつたか、という事は充分お察しがついたろうと思うがおろかにもその時の私には全然意味が判らなかつたのである。
しかし、自分が警察にかけこむ事だけは非常な克己心をもつて我慢した。今まで藤枝のやる事には必ず何か理由があつたから。
私はあえて克己心という。何故ならば、はたして藤枝の予言通り、ひろ子は留置こそされなかつたけれども、この日おそくまでとめられ、翌日すなわち四月二十七日から四日間連続して厳重に取り調べられていたらしいからである。
私は長いこの物語りの中で、たつた一個所此処でわがセンチメンタリズムに触れるのを許して頂きたいと思う。
読者よ、愛する美しき女性が無実の罪になやめるのをだまつて見ているその私のこの気もちは一体何にたとえたらよかろう。
第四の惨劇
1
思えばこの四日間はひろ子にとつてはおそらく、私にとつては勿
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