と思つたら、もう又旅行か。そりや仕方がない。じやともかく東京駅まで送つて行こう」
 時計を見ると、彼の乗る下関行の発車まで三十分しかないので、すぐ自動車に乗つて私は彼と共に駅までかけつけた。
「ねえ、留守中が心配だね。また何かおこりやしないか」
「うん、わからない。僕はわれわれ法律家の無力をしみじみと感じるよ。ここに将来何か危険なことが起り得ることが判つている。しかし犯人に対して確証がない。こういう場合、われわれ法律家には将来に対してはただ手をつかねていることが正しい道として与えられているばかりだ」
 改札口をはいりながら彼はこんなことを云つて、暗い顔をした。
 彼が、二等車の中におさまつた時、私は彼の留守中の事が気になるので、
「ところでお嬢さんのおもりは又やるんだろうね」
「うん、やつてくれ給え。もつともひろ子には君はあえないかも知れんよ」
「え? 何故?」
「警部が彼女を疑つていることは今云つた通りだ。まさか拘留はしないかも知れないが、当分毎日よばれるだろうからね」
「何だ君! じや君はあんなに反対説をもつていながら、警部にそれを云わなかつたのかい」
「無論だよ。それどころか、大
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