太郎の死亡によつて自分が相続人になることを知つている。さだ子、伊達を失うことによつて財産の損失を防ぎ得るばかりでなく、日頃の嫉妬のうらみをはらすことができる。そこで彼女はまずその機会の来るのを待つていた。自分で作つた脅迫状を父に送つたり、それから僕のオフィスへわざとどこかの女から電話をかけさせたりした。しかしチャンスはついに来た。財産の問題についての母とさだ子、伊達の烈しい口論である。ひろ子はこのチャンスを見逃さなかつた。彼女は母を殺すことによつてさだ子と伊達に嫌疑をかけることを考えた。その結果はごらんの如く十七日の夜に母が苦悶の結果死んだということになる。訊問されて母が最後に、さだ子に[#「さだ子に」に傍点]と云つたというような嘘をつく。これは度々云つた通りひろ子以外のものは誰もきいていない。警部がまずひろ子を疑い出した動機は、彼女が僕の所に来ておどろいて帰つたあの夜(彼女があの日は僕の処に来たことは僕から警部にあの当時話しておいたことだが)探偵小説をよんでいた、という考え得べからざるふしぎな供述からだつたという」
 藤枝にこう云われて、私はまたあの呪わしいグリーン・マーダー・ケース
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