ない』というようなことだつたという。初江は気味がわるいので、このことをひそかに林田に伝えた。林田は『そんなことをおそれる必要はない。しかし気味が悪かつたらよした方がいいかも知れない』と答えたそうだ。これはごく常識的な答えで僕にしてもそうきかれればこうでも答えるよりほかに仕方があるまい。風呂にはいる前に初江は気になると見えてまた同じ質問を林田にしたので、林田も同じように答えたと云うことだ」
「成程、それで事件直後林田は気になるので第一にパラフィン紙を探したんだな。その結果、初江は、気味の悪い警告にもかかわらず、木沢氏の薬を一包のんだことが判つたんだな」
「そうさ。しかも検査の結果木沢氏の薬には絶対に間違いがなかつたことが判つた。残りの二包には皆無害な健胃剤がはいつていることが立証された」
「ふうん、して見ると誰がヴェロナールにすりかえたろう」
「そこだ。そうして誰が木沢氏の健胃剤一包をかくしたか。曲者は一応木沢氏の一包を、初江がのんだように見せかけたのだ。それから……」
「電話の主は誰だろうね。女だそうだが……」
「それよりも、もつと大切なことがある。その電話の主は、どうして初江が木沢氏
前へ
次へ
全566ページ中369ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
浜尾 四郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング