奮を抑えているらしい。
「父の罪亡ぼしでございます。私は父の過去も伊達さんの過去も存じません。ただ女の直観としてそう思うのでございます。父は過去に、伊達一家に対してなした何かの罪のつぐないをしているのでございます。私は自分の本能を信ずると同時に、この事実が論理的にもよくこの状態を説明することが出来ると信ずるものでございます。もしそうでなければ、何度もくり返す通り、何故父があんな馬鹿げた婚約の条件を出したのでございましよう」
藤枝が、全く興奮した表情で思わず何か云おうとした途端、口にくわえたシガレットが床に落ちたが、今度は彼はそれに気がつかなかつた位、ひろ子の話に夢中になつていたのである。
8
この藤枝の様子に気がついたかどうか判らぬが、ひろ子は更に話をつづけた。
「ねえ先生、それに伊達さんの相手がさだ子ではございませんか。さだ子は母が死ぬ前の日に申した通り、たしかに母のほんとうの子ではございません――おお、そういえば、先生は、あれはしかしたしかに父の子だといつかおつしやいましたね」
「そうです。今でもそれは信じています。ひろ子さん、あの方の横顔をよくごらんなさい。争
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