う言葉で、自分と私をさしてくれたのを心ひそかに喜んだのであつた。
「ではおさきに」
 初江はそう云うとすぐ姿を消してしまつた。
 林田はシガレットをくわえたまま、窓の所に立つて外を見ながら何か考えている。
「林田さん、何か重大な事がおこつたと見えますな」
「今ね、あのお嬢さんの所にかかつて来た電話がいつこうわからないんだ。第一誰からかかつたかも判らないんだ」
「女だつてね」
「そう、たしかに女だそうですがね」
 私はこの時、十七日の午後、藤枝のオフィスの電話口できいたあの不気味な女の声を思い出して思わず戦慄したのである。

      3

「いつたいどんな話だつたのです」
 私は勿論こうききたかつたのだ。しかし今こんなことを訊ねた所で到底林田がその内容を云いそうもないのでこの質問はさしひかえた。
 ひろ子も私も黙つてしまつた。
 林田は林田で頻りに何か考えているようすで窓の所に立つてじつと庭の方を眺めている。
 妙な静かな十二、三分間であつた。
 私はこの間に藤枝の警告を心にくり返していた。彼は云つた。秋川邸にいるもの、来る者、全部に注意をせよ[#「秋川邸にいるもの、来る者、全部に注
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