おとといと同じく京浜街道を疾駆して横浜にはいつた。ひるにはまだ少し早いのだが、ここで腹を作ろうという事になり、またニューグランド・ホテルに入つたが、初江一人は全く食慾がなく、僅かにスープとパンを少し取つたばかりだつた。
「どうかなさつたのですか、余程おなかがお悪いようですが……」
私は少し心配になり出してたずねた。
「いいえ、別にたいして……いつこう何もいただきたくございませんの」
でも食事中は、彼女も、ひろ子や林田の話に加わつて快活に談笑していた。
食後、車首を更に西に向けて保土ヶ谷、戸塚をすぎ、藤沢の松並木を通つて平塚に出た。
ここらまで来ると皆、さすがに都の塵をすつかり離れて、いい気もちになつたのだが、初江のようすはだんだんおかしくなつて来た。さつきから一言も云わずに、胸を押えている。
「初江さん、あんたどうしたの。おなかが痛いんじやない?」
「え、たいした事はないの。ただ少し……」
「どう? 痛いの」
「少しね。おなかが痛いような気がするんですの」
こう云つた途端、胃から何か液がこみ上げて来たらしく初江は顔をしかめた。
「おい、ストップ、ストップ」
林田が運転手に声
前へ
次へ
全566ページ中309ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
浜尾 四郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング