ろ子、さだ子、初江が姿をあらわした。
 木沢氏が初江に向つて云う。
「昨日から胃が悪くて食慾がないということでしたね。丁度いいです。今日ドライヴでもなさつたらかえつてよくなると思います。私今帰つて午後に健胃剤をもつて来ますから、それまで運動していらつしやい」
 木沢氏がこういうのであるから無論今日もまたドライヴすることに決つた。たださだ子は父の様子を注意するために家に残るというのである。木沢氏が先ず秋川邸を辞した[#「秋川邸を辞した」は底本では「秋川郊を邸した」]。
 用意が出来て、林田、ひろ子、初江、それから私が車に乗るとひろ子が私にささやいた。
「さだ子はね。伊達さんが今朝早くからまた警察によばれているので心配で出られないんですよ」

      12[#「12」は縦中横]

 別にどこに行くというあてもない。私はただ藤枝の命令に従つて令嬢達を外に連れ出せばいい事になつているので、ドライヴのプランをきめていたわけではない。林田は何と思つているか判らぬが、これも別にはつきりした目的地はないらしく、結局、運転手の発議で、東海道をいいかげんに走つて見ようじやないかということになつた。
 
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