をとられていて後の話には気がつかないらしい。
けれども、私はもはや芝居どころではない。気が気でないのである。
五分間の幕間には、ひろ子も初江も席をはなれなかつたから、ここは無事に通過したが、次の十五分間の休みの時には、二人とも廊下で全く人にかこまれてしまつた。
二人とも、もうその意味が判つたらしく、すつかり心で後悔しているようだつたが、ひろ子は、これを感じると、心で何くそ、と決心したらしく、昂然として、平気で美しい顔を人々の前にさらしていた。初江のほうはこれに反してしよげ切つて、いそいで久や[#「や」に傍点]と共に席にもどつたが、ひろ子は中々席にもどらず私にしきりと芝居の批評などをするのである。
しかし、次の食事時間に至つて、周囲の人達の態度はますます露骨になつてしまつた。
食堂では、私は無論気をきかして私の名で席をとつておいたのだが、まわりの人達の視線はひとしくわれわれの上に注がれている。
初江はもうひどくまいつてしまつて一言も発しない。
「いやねえ、ほんとに。馬鹿らしいじやないの!」
ひろ子はたまりかねて初江にこんなことを云い出した。
まるで周囲から圧迫されるような
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